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俺と宗介だけの空間には、何とも言えない空気が流れていた。
何でバレたんだ! 何かボロ出すような事したか俺!
内心俺はパニックで、どう話を切り出せば良いか悩んでいた。
「えっと……」
やっと声を発する事が出来たが頭の中が真っ白で、何の言葉も出て来ない。すると、宗介が深い溜め息を吐いてうつ向いた。
「すみません……変な事言って。そんな訳絶対ないのに……」
「えっ?」
間抜けな声を出した俺は見ずに、宗介はダイニングテーブルに席着いた。
「男の人がキッチンに立つのを見て、昔一緒に住んでいた義理の兄を思い出したんです。それでつい呼んでしまって……」
『おにいちゃん!』
幼い宗介にそう呼ばれたのを思い出し、頭の中で心地良くその単語が響いた。昔、双子からはそう呼ばれていた。
最近会った慶介には兄さんと呼ばれていたから、より懐かしさが増した。
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