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慶介からは脅しの材料として使われ、正体は隠しておくべきだと自分でも思っていたのに。昔の呼び名で呼ばれて心が揺らいだ。
「あ、あのさ……」
「すみません、家の中に慶介以外の男の人が居るのはすごく久しぶりで。よく考えれば、兄は金髪にするような人じゃなかったから……絶対違うのに」
「そ、そうなのか……」
言うなら今だ、そう思っていたのに正体を明かすタイミングを逃してしまった。
しかも本人目の前に居るのに、金髪は全否定。
宗介はさっきの苦し気な表情から少し落ち着いていた。
正体を明かすタイミングは逃したけど、今なら俺の事をどう思っているのか聞けるかもしれない。そう思っちまった。
「そ、その兄さんの事……あまり覚えてないのか……?」
変に緊張して、声が震えそうなのを抑えながら口に出した。怪しまれない様に、何気なく自然に聞けているのかはわからないが、そういう風に装った。
「……別れたのは8歳の時で……名前も顔も朧気だから……」
宗介の事だから何でそんな事教えなきゃいけないんだ、とか言われると思ったけど予想とは違った。
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