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宗介の言葉で、ある事を思い出す。
「今日、二人の部屋も軽く掃除したんだけどな。慶介……さんの部屋にホームビデオあったぞ。あれ見ればわかるんじゃねぇの……?」
やんわりとそう言えば、宗介は首を横に振り、テーブルに乗せた手をもう片方の手で強く握った。
「見ようとした事はあるけど、どうしてもだめで……。息苦しくなるんです……」
「それって……」
やっぱり俺の事はよく思ってねぇのか……。
元々思っていた事だ。幸せを壊して何も言わずに家から出ていった奴の事を、よく思っている筈がない。慶介がかなりレアなケースなんだ。
「まぁ……嫌いなら仕方ないよな」
覚悟はしていたから、仄かな期待にやっと諦めが付くと思い、そう呟いた。そしたら、宗介が俺の方を睨み、声を荒らげた。
「嫌いじゃないっ!」
「へ……?」
予想もしていなかった言葉に、俺は固まった。宗介は我に返ったのか、申し訳なさそうに俺から目を逸らした。
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