小さい男女の話。

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『ゆうたくんへ、いきなりでごめんなさい。実は、ゆうた君のことがずっと好きでした。いつもゆうた君は運動も勉強もできて、かっこいいと思っていました。』 「うーん、このあとはどうしよう」 小さな少女が教室の隅で、想い人へ当てた恋文を書いていた。だがそれを前に、少女は小さな頭を捻らせる。 「よっ、芽衣ちゃん何書いてんの?」 声の主が、秘密の恋文を覗き込んできた。 「あ、絶対に秘密だよ?……ってゆうたくん!?」 「……あ、ご、ごめん!」 なんと想い人に当てた恋文を、完成する前に本人に見られてしまった。……どうしよう、どうやって顔を合わせたらいいの。 悶々とした気持ちが心臓を打ち鳴らして、気付けば時間は昼休みを迎えていた。算数の授業も国語の授業も、まったく頭に入っていなかった。周りの友人達を見ると椅子を机の上にあげて、掃除の準備をしていた。私も準備しなきゃ。 掃除の始まりを告げるチャイムが校内に響いた。なんとも言えない事に、私とゆうたくんは同じ教室のほうき担当だ。いつもは掃除の時間が好きだったのに、なんか今日は、嫌だ。嫌じゃないんだけど、もうわかんない。心の中でだけ行われる自分会議の片手間に、埃を掃いていると、ゆうた君にちょいちょい、と手招きされた。ドキリと心臓が跳ねたが、妙な使命感から足は彼の元へと進んだ。 「な、何?」 「耳貸して」 そう言われて少し戸惑ったが、素直に右耳をゆうた君の方へと向けた。するとゆうた君は私の耳に手を当てて、こう囁いた。 「俺も、好き」 耳のすぐそばで囁かれた彼の声と、その言葉の意味を理解した途端に、体が右耳から溶けていくようだった。燃えるほど熱くなった頬に両手を当てながら、彼の目を見ると、にこっと笑った。あぁ、もう。本当に大好き。
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