春のよう

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まぁ……誤魔化されてあげよう。 嬉しいから。 「手……」 繋ぎ直して、歩き出す。 「僕と繋いで下さい、これからはーー」 お母さんの次は、俺と。 「ずっと…こうして」 歩いて行きたい。 ずっと、一緒に。 「知ってるくせに」 「え?」 「俺が…千樫のお願い、何でも聞く事」 あの時からずっと、変わらない。寿彦さんは。 「もう……それじゃ僕が、わがままみたい」 「そうだよ、わがまま…言って欲しいんだ。もっと」 今度は寿彦さんが、俺の手を引っ張った。 「それを俺の天命にしよう」 「そんな…大袈裟な」 「じゃあ俺が決めた…ノルマかな」 「達成したら、どうするんですか?そのノルマは」 「千樫に…ご褒美貰おう」 俺がご褒美だなんて…何か……にやけてしまう。 寿彦さんに腕を絡める。 「何でも…します…」 「何を?」 「ん……色々」 「じゃあその色々を知る為に、頑張るか」 「…何を?」 「それはもちろん……色々?」 こうやって、他愛ない話をしながら。 二人で、歩いて行きたい。 ずっと。 春の色した、二人の道を。 「とりあえず…焼きそば、食べたいです」 「うん、食べよう」 「あーあと、じゃがバタあったら…」 「うん、それから?」 「あとは…あと…」 「何でもいいや、全部食べよう?」
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