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中学に入って直ぐにヒデがベースをやり始めて、ついに去年、レンとアツと三人でバンドを組んだと報告をしたら、何故かオバちゃんは大喜びして、ブランディは今ではすっかり部室のようなものになっている。
夕方六時くらいに家を出て、自転車で三十分ほど走ったところにある歌地区のローソンでレンを待っていると、かごを取っ払った自転車に乗って、レンはやっと姿を現した。残り十五分。男はどうしてこうもギリギリの時間にならないとやって来ないのだろう。
「よう、秋理」
レンは学生服のまま、眠そうな顔でそう言った。何が「よう」だ。六時半にローソンと言ったのに。これじゃまるで私が張り切り屋でバカみたいではないか。
「遅いわ、何してん」
「寝てた。波の音聴いてたら、ついな。でも一番の原因はこれなんよ」
そう言って、レンは自分が乗って来た自転車の後輪部分を私に指差して見せる。レンの自転車の後輪はベコベコになってしまっていて、それはそれは酷い有り様だった。
「あんた、どんな乗り方しとんねん」
「浜への道は長く険しい茨の道やから、こうもなる」
「どないすんの、なんぼ直ぐそこ言うたかて、ここからブランディまで徒歩で十五分以内は無理やで」
「そらお前、こうすんねん」
そう言って、レンは私から自転車を奪った。強盗!私の自転車返してよ。
「何すんねん!」
「何すんねんて、こうすんねん。俺が漕いでやるから、はよ後ろ乗り!後れても俺、知らんで」
このばかは一体、何を言っているのだろう。私の自転車を奪っておいて、後ろに乗せてやるやるだなんて。それに私は、二人乗りは好きじゃない。
テレビで観ると青春のワンシーンなのに、実際に二人乗りをすると大概捕まって怒られるし、スカートを履いていると風が吹き抜けた時に不安になる。
映像では何でも美化されるのに、いざ現実の事象に捉えると、瞬く間に非常識と化す。果たして、青春とは何であろうか。
仕方がないので、私は待機しているレンの肩に掴まって、そろそろと荷台に腰を下ろす。跨がるのは何だか品が無いので、ベンチに座るような形になった。これなら、もし風が吹いても安心だろう。
二人分の重さを抱えた私の自転車は、ギコギコと少し不安な音を立てながら進んでいった。
レンは懸命に漕ぐ。いつも自分で漕ぐ時は前しか見ていないから、自転車から横を眺めると、少しだけ周りの景色が違って見える。
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