指先から、言の葉

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う…………これは…… 心臓、黙れ……っ んんっ!と咳払いをして、キョロキョロと店内を見渡す。 くまなく見たところで、結局花のことはよく分からない。 「何かお探しですか?」 「あ、の……花束を……見繕って欲しいんですけど」 「花束ですね、かしこまりました!」 彼女は、白いハイネックセーターの袖を捲り直した。 「花束を送る方は、どんな方ですか?」 「……えっ??」 突然そんなことを聞かれて、俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。 「その方のイメージに合わせて、お花を選びますので」 「えー……と、イメージ……う~ん」 咄嗟に何も浮かんでこなくて、言葉に詰まる。 ばあちゃんのイメージ……つったって…… 俺が眉間にシワを寄せて変な顔をしていたのだろう。 彼女は、クスッと笑った。 「送る方のイメージや、どんな想いを込めて送るかっていうのをお聞きして作った花束は、 相手に気持ちがきちんと伝わるんですよ」
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