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私は屋上から必死に階段を降りると、保健室のある一階の部屋まで走り続けていた。屋上にいたときとは全く違う不安感が頭をよぎり…やっぱり脚がすくんでガクガクして、心臓も速いかも、息も荒くなってきて…回りの音も聞こえなくなってしまった。
隆弘くん!
死んじゃやだ!
その時点で告白のことはもう忘れていた、隆弘くんさえ無事なら、それだけでいいって、それだけを思って保健室へ入った。
無我夢中でベッドを探し、カーテンをガーッ!と開けた!
そこには隆弘くんが寝ていた!…
「 先生!?たッ!? 隆弘くんは大丈夫なんですか!? 」
「 隆弘くん、何かのショックで倒れたみたいね、それで頭を打ったの、軽い脳震盪だから時期に気がつくと思うわ… 」
「 ショックですか?… 」
「 もしかしたら…あなたが 理子さん? 」
「 はい…そうですけど… 」
「 目が覚めたら…静かに話しかけてあげて…優しくね… 」
「 …はい… 」
ベッドの横に座り、しばらく隆弘くんの寝顔を眺めていた。
心配…
隆弘くん…
隆弘くんの手が見えた、握りしめたいけど…
私は隆弘くんの彼氏じゃないから、握ってあげられない…
あと、ほんのちょっとで、私の小指と隆弘くんの小指が触る位置なのに…
隆弘くんしっかり…
すると、私の声が届いたのか、隆弘くんが目を覚ました。
「 大丈夫
」
「 うん…」
「 …よかった… 」
嬉しさのあまり、手を動かしたはずみで隆弘くんの小指に触ってしまった。
「 宇野さん… ごめん…」
あ…そうだよね…私なんか…
「 …うん……でも…気がついてよかった… 」
「 …屋上行けなくて 」
え?…そっち?…
次の瞬間、まだしていない告白の返事を、彼からもらえることができました。
隆弘くんの温かい手が、震える私の手を
そっと優しく
包み込んでくれたのです。
後に聞きましたが…隆弘くんは、下駄箱の前で倒れていたそうです…
おわり
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