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「トントンほどは稼げないけどさ、でもようやく僕も一人前になれたかなって思ってるんだけど、ダメ?」
「いや、それは、でも結婚するわけじゃないし……」
「するよ、結婚」
「はい?」
「トントンは、僕と結婚するの」
すっぱりと言い切られて、はあ、と情けない返事しか出てこなかった。
「トントンは、嫌?」
まんまるな目が不安そうに揺れている。でも視線を逸らさない。こういうところが強くなったんだなあ、と思う。いい変化だ。
「したいです。結婚しましょう」
「やったあ!」
優貴が飛び上がって、ぎゅっと抱きしめ返される。
「僕、このために頑張ってきたんだからな」
「うん。本当によく頑張りました」
「これで胸張って挨拶に行ける」
「そうだね」
「隠してたけど、三年前からずっと中国語も勉強してるんだ。毎日オンラインで。実はトントンが電話で中国語で話してたりすること、十分の一くらいは聞き取れてる」
「それは迂闊だったな」
「時々めちゃくちゃ惚気てるよね、トントン。聞いてるこっちが恥ずかしくなる」
そんな事聞かされてる僕の方が何倍も恥ずかしいに決まってる。仕返しに鼻先を摘まむと、「いてて」と叫びながらも、優貴は満面の笑顔だ。
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