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夕方までには見つけ出さないと、もし見つけても間に合わなくなってしまう。
そんなことを考えながら、川沿いに進んでいくと前方に見える斜面がえぐれていた。
急いでその下まで向かった。
地面のぬかるみはより一層ひどくなっていた。
えぐれた斜面の下に着くと、そこで土砂崩れが起きていた。
大きな岩が川をふさぐように落ちてきていて川の水が外側に溢れてきていた。
おそらくこの辺りは雨が振りやすく、このような状態になってしまったのであろう。
そうと分かれば一刻も早く報告に村に戻らなければ彼女が生贄として無意味に殺されてしまう。
僕は村に向かって走り出した。
「あ。ちょっと待てよ。」
与一の呼びかけにも応じずにとにかく無我夢中で走った。
今からだと間に合うかどうか微妙なラインだ。
ぬかるんだ山道を泥が跳ねることも気にせず、ぬかるみで滑り転倒してもすぐに立ち上がり走り抜けた。
そうして森を抜けたころには、すでに日が落ちかかっていた。
「間に合ってくれ。そうじゃないと君に面目が立たない。助けると啖呵を切っておいて最後の日にそばにいてあげられず悲しい思いだけを残してさよならになってしまう。そんなのは嫌だ。だから絶対に君を助けるんだ。」
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