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村の人々に聞いてみたところ、彼と友好の深かった雄介さんと一緒に行ったきりまだ帰ってきてないそうです。
「あなたの彼は何してるのかね。彼女が今日生贄としてささげられるって時に。」
「彼は私を助けようとしているんです。今もきっと私のために必死になってくれてる。それだけで私は満たされているんです。」
それから村長の家で儀式のための準備を行いました。
白服に身を包みお化粧をして準備万端です。
やっぱり怖い気持ちはありますけど、生贄としてこの気持ちは抑えなければなりません。
ただ1つ心残りは最後に彼とお話ししたかったなということです。
村長の家から祭壇に移動し、儀式が始まりました。
みんなで祭壇に祈りを捧げ竜神様をお呼びします。
そして村長が式句を読み上げ、私は竜神様に見えるようにお酒を口づけ、祭壇の上に登っていきました。
階段を上っている間、彼との思い出ばかりが思い出されました。
今までの日々がものすごく充実していてかけがえのないものだったんだと。
まだ幸せな日々を過ごしていたかったなという強い思いが胸の中に巻き起こりました。
そうして祭壇の上まで登り切った私を打ち抜く弓が引き絞られ放たれたとき、彼が私を跳ね除け彼の胴体に深々と矢が刺さっていました。
「なんで。あなたがこんなことに。」
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