下級生・生徒名簿

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その後は特に変わったこともなく、 校長の訓辞(くんじ)から始まった。 変わった事と言えばアーネスト・ストロング校長が 、何故(なぜ)か白衣で現れたことと、その訓辞(くんじ)だろう。 「宇宙に来てまで白衣と皆さん戸惑ったかも知れませんが、これには意味があります。 宇宙ならではの理由です。 みなさん創造力を働かして考えて見てください。 ここは地球から遠く離れた新天地。 宇宙で白衣をなびかせるマッドサイエンティスト。 男のロマンではないですか」 その突飛(とっぴ)なジョークも、 今は歌姫の余韻(よいん)の火にまぎれ、 誰の耳にも届いてなかった。 後で校長ってどんな人だったけて言うほど、 印象に残らなかったのは不運と思って、 あきらめてもらうほかない。 この後、特に特筆すべき事もなく入学式は 終わったのだが、少しだけ変わったこともあった。 この後、入学式は淡々(たんたん)と進んで、 先生の紹介に移った時の事である。 「続きましてキャロンド・ブラウン先生 お願いします」 そう言った後しばらく誰も出てこず、 にわかに壇上がざわめきだしていた。 いならぶ先生の間が突然(にぎ)わしくなり、 人が行き交い雑談が始まっていた。 呼ばれたキャロンド先生はいっこうに現れず、 一事入学式は遅延(ちえん)していた。 その後しばらくして、 キャロンド先生は容態(ようたい)(くず)して主席できません と言う言葉とともに入学式は再開した。 そして入学式を無事終えた生徒一同には、 自由時間が与えられていた。 就寝時間までコロニーを自由に見て回って いいそうだ。 校長いわく、それこそが男のロマンだとか。 そんな一風変わった訓辞の中で凡愚(ぼんぐ)な生徒にも わかった事と言えば、変態の考えることは凡人には 、理解しがたいものであると言うことだけだった。
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