悪魔の予言の続きには

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十三時を少し回ると彼は店から出て来た。この時彼の全財産は寒さに耐えながら列に並んでいた数時間前の百倍になっていた。そしてこれも予言の通りであった。店の前の大通りに出ると彼は左手を挙げて人生で初めてタクシーを止めた。そして次の目的地の中央競馬場へと向かった。今日は今年最後のG Iレースが開催される日で競馬場は多くの人がつめかけていて熱気と殺気が入り乱れていた。彼は迷わず数十分前に手に入れたばかりの全財産五百三万オンを8-9-1の三連単つぎ込んだ。そして十五時二十分、一斉にゲートが開きレースが始まった。レースは荒れに荒れた。雷が鳴り響き、一発の落雷が競馬場の屋根に落ち、落馬も発生した。 十六時過ぎに特別に呼ばれていた個室から彼が出て来た。両手には大きなジュラルミンケースを持ち、彼の右側を歩く男性職員が二つ、さらに左側を歩く女性職員が一つ持っていた。そして三人の左右前後を黒いスーツの屈強な四人の男が護衛していた。それぞれのジュラルミンケースの中には一億オンずつが詰め込まれて、競馬場が用意したハイヤーのトランクにジュラルミンケースを乗せて自分もハイヤーに乗り込むと彼は次の目的地の国で一番の大銀行に向かった。銀行に着くとハイヤーはVIP専用の通路から入り、専用の窓口の前で停車した。そして彼は一人で銀行の窓口に向かった。 「講座を作りたいんだが。」 「はい、かしこまりました。ご口座を開設するのにご預け入れが必要なのですが、よろしでしょうが?」 「ああ、じゃあこれで。」女性職員は表情を一瞬固めたが、すぐに今までのように丁寧な対応で手続きを続けた。 「はい、かしこまりました。では一万オンでご口座の開設いたします。説明なのですが、この口座はネットバンクと共用になっておりまして…」     
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