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どこかに必ず「〇〇日和」が登場する妄想を投稿してください! ということで小説を募集すると、ありがたいことに、たくさんの応募が集まった。
ところが選考委員は頭を抱えた。どういうわけか、その全てのタイトルが、「殺人日和」だったのである。
どれもこれも、ワンパターンの、人を殺す話だったのだ。
「いくらなんでもこれでは」と、選考委員の一人が言った。「この企画、廃止にした方がいいんじゃないですか」
すぐにそう決まった。
一番残念がったのは、この「〇〇日和」という企画を最初に提案した悦子である。彼女は家に帰ると、悔しがりながら、参加作品を一つずつ読んでいった。
今現在も、決して入賞することのない「殺人日和」という小説がどんどん投稿されている。まだ企画がボツになったことが、サイトに反映されてないのだ。
ふと、悦子は気がついた。
どの「殺人日和」という小説にも、6月12日がその日だと書いてある。これは単なる偶然だろうか。そもそも、全部の投稿作が「殺人日和」だというのも、流行の一言で片付けられないような気がする。
これには何か、大きな力が働いているのかもしれない。
「……一体みんなどうしちゃったの?」
そしてカレンダーを見ると、明日がその6月12日だった。
悦子は次のような仮説を立てる。
明日世界が終わって、町がめちゃくちゃな状態になってしまうということを、人々の無意識はすでに察知しており、それが小説に形になって現れているのだ、と。
その時どうしようもなく睡魔が襲ってきた。
次の日の朝、覚悟して目を開けると、いつも通りの、なんでもない朝だった。
パソコンを開いて、投稿作を見ると、「散歩日和」や、「恋愛日和」など、バラエティに富んだ様々な作品が投稿され始めていた。
会社に行くと、企画の取りやめは取りやめになった。
悦子はホッとした。しかし、一体全体どうしてずっと「殺人日和」しか書かれなかったのだろうと思うと、なんだか不気味な感じがしてくるのである。
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