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ファミレスに入ると、男の子はいの1番にお子様セットを頼んだ。そして、私と八尋さんも適当にそれぞれ頼み、向かい合うようにして座る。
「この子、姉の子供なんです」
「甥っ子さん……」
「姉夫婦が出張で海外に行っている間、面倒見てて」
「そうなんですね」
その情報を教えてもらえたのは嬉しいものの、どうしてそれをわざわざ私に話すのかが分からない。それを言うだけなら先ほどの場所で言ってくれても良かった気がする。それに……。
「いいんですか?」
「何が?」
「私とご飯なんて、彼女が知ったら嫌な顔されるんじゃ……」
「え?」
「え?」
心底何の話か分からない、という顔をする八尋さんに、私も何も言えなくなる。
どう次の話を切り出そうかと考えているうちに、3人分の料理は運ばれてきた。
「ハンバーグ!」
目をキラキラさせながら、男の子は子供用のナイフとフォークをハンバーグへと突き立てる。
「あぁ、待って!おじさんが切るから」
「やっ!自分でやるの!」
「本当に大丈夫か……?」
不安そうな視線を八尋さんが向けるも、切るというよりは砕きながら男の子はハンバーグを食べ始めた。何となくその様子を確認して、私たちも自分の注文した料理を食べ始める。
食事中は無理に会話もしなくて済み、正直少し助かる。
「おじさん、カノジョいるの?」
「!?」
男の子の直球過ぎる質問に、ちょうど水を飲んでいた八尋さんは吹き出しそうだった。
「お前、急に……」
「だって、さっきおばちゃん言ってたでしょ?」
「おば……」
いや、幼稚園児から見たら私も十分おばちゃんで間違いない。
思わず言葉を失いながらも、八尋さんが口を開くのを待つ。
「カノジョの意味、ちゃんと分かって聞いてる?」
「わかってるよ。ツキアッテル人ってことでしょ?」
「今の幼稚園児は進んでるな……」
そんな感心の言葉に私も胸の内で頷いていると、八尋さんは一瞬こちらをちらりと見た。
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