妖精との約束事

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妖精との約束事

 それからというもの私は、花ちゃんと二人でちょくちょくブラウニーの畑に足を運んでいた。  どうして花ちゃんと一緒なのかというと、一度私一人で行ってもブラウニーは現れなかったからだ。その後花ちゃんを連れて行ったら、彼は普通に出てきた。これはきっと、もう私が大人になりかけているからなんだと思った。肉体的にも、精神的にも。  何故なら、私と花ちゃんでは、ブラウニーの元に通う理由が少し違ってきてたから。  そんなある日の事。  ふと私は、どうしてもブラウニーの手を握ってみたくなった。勿論、男子に対して手を握るなんて事、した試しは無い。しかし、彼は学校に通うどの男子とも違い、どこか垢抜けて、神秘的だった。妖精なのだから当たり前と言えば当たり前で、そもそも私達と彼では全く違う生き物なのだが、見た目は同年代の男子。思春期を迎えた私を、その衝動に突き動かせるには充分だった。  花ちゃんは畑で蛙を追いかけて遊んでおり、ひと仕事を終えたブラウニーは丸太に腰掛けてその様子を眺めていた。 ――今しかない――  私はごく自然なふりを装って、ブラウニーの隣に座る。実際は自然でも何でもなくて、呼吸は早まり、心臓は飛び出そうなくらい胸の内で跳ねまわっている。  彼は一瞬こちらを見るが、またすぐ畑の方に目をやる。その横顔に見とれそうになるが、今は我慢して丸太の上に置かれている色白の手の位置を確認。もたもたしていたら、ブラウニーはまた仕事に戻るかもしれない。  少し不自然な距離だが、その上にゆっくりと気付かれない様に、自分の手を伸ばす。距離が近付くのに比例して心拍数も上昇していき、ほんの少しの距離がやたらと遠く感じてしまう。――やがて二つの手は、そっと重なった。  
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