第八章 ロディアーニからの船旅

22/25
前へ
/25ページ
次へ
―装備全部外したいな。今、夜だから寒いけど…暑い昼間だったら全部外して海に飛び込みたいわよ。 半日身に着けていると、肩は凝るし、首は強張る。寝る前に全部外した時の爽快感と言ったらないし、 でも今は無理か。 「ふー…温かいお風呂につかりたい…。」 つい、胸の内をこぼしてしまう。 すると、甲板の板の軋む音がした。 振り向くとぼうっとした角灯(ランタン)の明かりと、湯気が見える。 あ…いい香りがする。 顔を上げると、二つのカップを持ったリーディが立っていた。 「…寝ているかと思った。」 「さすがに見張りでは寝ないし。」 ほら、と渡された良い香りのするカップの中は濃いコーヒーだ。 「気が利くだろう?」 「はいはい、ありがとう。」 一口飲むと、いい香りと温かさが身体中に広がっていく一方 「…苦い…」 ステラは少し顔を顰めた。これは嫌がらせか…ってくらいの濃さだ。 「目が冴えた?」 「…おかげさまで。」 リーディは夜、周りに気を遣って、ステラ一人の時にこうやって話しかけてくる。 とてもそれが自然で。さりげなくって。 「あれ、 リーディのカップの中身は コーヒー じゃないんだ。」 「あ、俺はもう寝るから。」 そう言いながら、彼はカップの中の白湯を飲んでいる。 「それにしても、海原も冷えるな。なんか羽織ってくればよかった。」 「…入る?」 ステラは大判の毛布の左側を開いて彼を誘った。リーディは一瞬どきりとしたが彼女の肢体は堅固な鋼の鎧に包まれており、それがランタンの炎に反射し光っている…。 「…鎧が却って冷たそうだな。」 リーディは少し彼女の身体の柔らかさを期待していたが、当てが外れたのでほんの少しがっかりした様子で答えつつ、毛布の半分にくるまるようにステラの横に腰を下ろした。 案の定、鎧が触れると冷たい。 「…冷たい…」 「でしょう?首筋とかに触れるとひやっとするんだよ…でも、万が一襲撃に遭った時のことを考えると装備を外すわけにはいかないしね。もー肩が凝るよ。」 そう言いながら、ステラはカラカラと笑った。 ランタンの明かりがあるけど薄暗いせいか、却って緊張はしない。 鎧に守られている感じもあるからか。いつもより至近距離でもリラックスして話せるようだ。 「リーディの故郷って、魔法国家なんでしょう?」
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加