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「悪い、みんなに色々訊かれるから面倒なんだ、その質問。」
彼はそんなことを答えにここに来たわけではないという雰囲気を醸し出しながら、ステラの質問を遮った。
「…ごめん。でも久しぶりにフィレーンさんや老師に会えると思うと…嬉しいや。」
豪快に笑っていた表情を、女性らしい微笑みに変えると、ステラはリーディの方を向いた。
それと同時に彼の手がスッと入りステラの後頭部を支えている、清涼感のあるいい香り。いつも彼から感じる匂いだ。
リーディは彼女の顔にそっと顔を近づけて、瞳を閉じた。ステラも、彼に匂いに安心したのか身を委ねようと思った。心臓の音がまた早くなる。
正確に言えば、身体の力が入らなくなったのだ。恥ずかしい。ついステラも目を閉じてしまう…。彼もその姿に扇情されて逸る気持ちを抑えつつ、
そっと唇を近づけた…。
しかし…。
突然ステラは瞳を見開いた、見ると目の前の彼も瞳を見開いている。
…魔物の気配?
二人は目で頷いた。いつの間にか、彼も腰に携えている細剣に手を掛けている。ステラも素早く籠手を身に着けて、立てかけておいた鉄の盾を素早く装備する。
そしてお互い何も言わず、迎撃の構えを取る。
気配のある方を向くと…海面がざわめいている…水飛沫と一緒に
巨大なハサミが垣間見えた…!
「巨大ガニだ!!」
気が付くや否や、集団でステラを鋭利なハサミで斬り刻もうとものすごい速さで甲板に上がってきた。
ステラはそれを素早く盾で受け流す。すると、もう一匹が彼女に襲いかかろうとする。
けれども彼女は怯まず、フランベルジェで蟹の関節部分の柔らかいところを狙って切断。
しかし接近したところで返り討ちに遭うが鎧のおかげで、大して傷は負わなかった。
―やっぱりきちんと装備しておいてよかったよ…。
ステラは一人ごちた。
もう一匹はリーディが得意な火炎呪文で丸焦げにする。しかし彼は軽装で、レイピアだとこの守備力の高い甲殻類のこの魔物らは、接近戦では攻撃できない…。
「リーディ、後衛で、私を…」
「わかってる。 俺が魔法で援護するから、とにかくこいつらを…!」
二人のフォーメーションの考えは一致していたようで、あとは見事な連携プレイで巨大ガニを駆逐してゆく。後方でリーディが魔法で守備力を下げてこの魔物たちの甲殻の強度を弱らせて、ステラは叩っ斬っる…。
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