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無事魔物を退治して、二人は息を整え、額の汗をぬぐった。
「ステラ…怪我は?」
「大丈夫。この鎧が役に立ったわ…やっぱり常に油断は禁物よね。」
…あれ?リーディがなんかちょっと不機嫌そう。
ステラはそう気づきつつ、言い続けた。
「…なんか、私達、お互いの気持ちがわかってからの方が戦闘でもスムーズだよね。
以心伝心で、補完し合って闘えたし。」
「…そうだな…」
そう答えて、微笑み返してくれるもやっぱり機嫌が悪い。
ステラは少し怪訝そうな顔をしながら、剣についた魔物のおぞましい体液を懐紙でふき取った。
リーディは確かに不機嫌だった。
理由は二つある。一つは懸念と言ったほうが正確だろうか。海の様子がこの海域に入った途端、
邪気に包まれているような気がしたからだ。どうもここら辺はきな臭い。ずっと海は穏やかだったのに、
これから経由する諸島群で何もなければよいが…という懸念であった。
もう一つは、ステラに接吻をしようとして雰囲気をぶち壊された苛立ちだ。
彼女がようやく自分を自然に受け入れるというその直前に、魔物がやってきたものだから…
幸か不幸か、彼女は闘いが始まると、いままでのことが頭からすっぽ抜けるので、気まずくはなっていないが。
そう思いつつステラを見ると、ステラは急にそのことを思い出したようで、
顔を真っ赤にして自分を見ていた。
―あー…思いだしたみたいだなー…。
キスできるまでは、まだ当分先だろうと彼は思った。
次の朝、諸島群に着いた。
スフィーニまでまだ距離が大分あるので、小さな村があるのなら水などを補給させてもらおうと、
島々の合間を縫って再び漕ぎ出していた。
ステラは不寝番が終わり、コウと交代し明け方、船内の部屋のベッドで眠りにつこうとしたら、
どうも眠れない。
他の仲間も幸か不幸か起きてこなくて、二人っきりでいるのが居た堪れなくなった。
あの後、恥ずかしさで、俯いていたらリーディも気を遣って何もそれについては言わず…。
「また何かあったら、点呼鐘をすぐ鳴らして皆を呼べよ…。この海域の魔物が獰猛な気がするから。」
そう言いながら私の身体に毛布をふわりと掛けて、船室へ降りて行っちゃったんだ。
幸いあの後魔物は現れなかったけど。あれから…一人で包まる毛布は、寒くて。
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