となり

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僕の隣は、いつも空いている。 淋しいかって?? いや、全然。 強がっちゃいないよ。 僕には、仲間がいるからね。 入れ替わり、僕の家には、仲間がやってくる。 そして必要とあらば、みんなそれぞれに出て行く。 後腐れなんて、ないさ。 サッパリしたもんさ。 そんな付き合い方が、楽でいい。 それに比べて、 お隣さんは、可哀想に。 いつも、ひっそりとしていて、仲間がいない。 来ては、出て行くを繰り返している。 でも、そんなお隣さんの様子が変わりそうだ。 長年、引きこもっていたご主人様が、 動きだしたのだ。 毎日、母親から、 千円札一枚を貰って、 生活していた僕のご主人様。 それが入ったのも束の間、 あっという間に、そこは空席になって、 僕の仲間が少しずつ増える。 えっ!? 僕は誰かって?? そう、僕は小銭入れさ。 ご主人様が使う 長財布の中にいる。 今日は、彼の初めての給料日。 隣には、初めて見る顔ぶれ。 一万円札と5千円札。 『よろしくな』 まっ、すぐに別れは来るだろうが、 隣がいるって、悪くない。 一期一会、 僕らもこの出会いを楽しもう。 ご主人様は、僕らを覗き込むと、 誇らしげに、にんまりと微笑んだ。
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