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「そうか、で、どうしたらいい」
対処の仕方がわからぬ私は母に聞く。
「大丈夫よ。大人が出ていくことじゃないから、あのままにしておきましょう」
私は少々不安であったが、母の言葉に従うことにした。その後も、しばらくは俊太の声が聞こえてきたが、やがてそれもなくなった。みんなが寝静まった頃を見計らって、私は俊太の部屋を覗いてみた。すると、俊太のいつもの布団は、俊太の側にはあるものの、口にくわえてはいなかった。
翌日の昼過ぎに、友達が帰った。友達の見送りから帰ってきた俊太が私のところへ来て
「パパ、あの布団もういらないから」
と得意げな顔で言った。
「そうか、偉いな、俊太」
私は俊太の成長が嬉しかった。だけど、これで妻と俊太を繋いでいてものが一つもなくなってしまったようで、悲しくもあった。
私は妻に報告をしようと、仏壇へと向かった。妻の遺影をみながら、私は昨日から今日にかけての出来事を少しの悲しみとともに語りかけていた。すると、俊太が私の顔を見て
「パパ、なぜ泣いているの」
と聞く。
「半分嬉しくて、半分悲しいからさ」
私の答に
「パパ、大丈夫だよ。俊太がいるからさ」
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