第9章

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「今日、パートの面接に行こうと思うんです」 「え?」 「みんな頑張ってるでしょ? 私もそろそろお仕事探しに行かなくちゃと思っているんですよ。でも、もう年でしょう。良いところあるかなって心配なんですが……」 「まあ、まだいいじゃないの。もう少しゆっくりしてから考えても?」 お母さんが慌てて止めた。 「翔のためにも早く働きたいと、思ってるんですよ」 「分かるわ。でも、……それに翔君が大学へ行くお金くらいはあるから。そんなに慌てて行かなくても」 「そんな、とんでもない! そういうわけにはいきません……!」 翔の母は驚いてお母さんの申し出を断った。 「お母さんは、寂しんです。翔君のお母さんが働きに出れば、お昼の間また一人ぼっちになるから……」  陽奈の言葉にお母さんはフフッと柔らかく笑った。 「あら、陽菜ちゃん。6時半回ってるわ。お寝坊の二人を起こしてきてくれない?」 「は~い。お母さん」 陽奈に起こされた二人は、眠そうな顔をして、キッチンに顔を出した。 「おはようございます。フアー」 と大きな欠伸をしながら、大原が言った。 「さ、顔を洗ってシャキッとしてから朝ご飯を食べましょうね」 「ふぁーい。陽奈ちゃん」 「さ、早く早く! あら、ライちゃん、おはよう」 ライは、陽奈の足元を嬉しそうにスキップしてる。 「おいで、朝ごはんよ」 陽奈がライにやさしく言った。 「陽奈ちゃんはライにばっかり優しいんだから。ライ! お前ずるいぞ」 大原の言葉を分かっているのかいないのか、ライは嬉しそうにパタパタとオッポを振った。 「ほんとに何を言ってるんだか……」 お母さんはあきれ顔で嬉しそうに笑った。 「お、メシだ、メシだ! うまそう~! いただきま~す」 顔を洗ってきた大原と翔は、席に着くなりご飯にかじりついた。 「うまい!」 「ほんと!」  二人が幸せそうな顔で朝ご飯を食べるのを、翔の母は嬉しそうに見ていた。 「ごちそうさま。行ってきます。」 大原は元気よく会社に行った。 「僕は、まだ時間あるので部屋に戻ります」 翔が席を立つと、お母さんも…… 「そう、じゃあ、わたしは、ライちゃんのお散歩に行ってきます」 ヨッコラショと立ち上がりかける。ライがそっと足元に寄り添う。自分を支えにするようにと言ってるようだった。 「まあ、ありがとう! ライちゃん」 お母さんは感動して、椅子とライを支えに立ち上がった。
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