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「そうだわ。理沙ちゃんたち、今日は早番だからもう起きないといけないんじゃ……」
お母さんが二階を見上げた。
「あ、私、起こしてきます」
陽奈が立ち上がりかけると、上から二人が下りてきた。
「さ、ご飯ですよ。二人とも、お昼と夜は外食が多いから、朝はしっかりと食べてね」
翔の母が理沙たちの前に味噌汁を置いた。
「はい。いつも有難うございます。おいしそう、いただきます」
理沙と久美子はそっと両手を合わせてから、箸をとった。
「理沙ちゃん、久美ちゃん、私もね、働きに出ようと思ってるの」
「翔君のお母さんが?」
理沙が驚いたように言った。
「ええ、昨日スーパーに行ったときに、募集の張り紙を見て、私も働きたいなと思って、採用してもらえるかどうかは分からないけど、今日、行ってこようかと思います」
翔の母は自信なさげに笑った。
「翔君のお母さんなら大丈夫よ。一発合格よ」
理沙が励ますように言ってから、ガッツポーズをとった。お母さんだけ少し寂しそうに笑った。
―――
――――――
「お母さん、採用されました。」
翔の母は嬉しそうに、両手いっぱいにスーパーで、買い物をして帰ってきた。
「まあ!」
「今日からでも働いてほしいって、でも採用されたことをお母さんに報告したくて、帰ってきました」
「じゃあ、私が駅前のスーパーに行ったら、恵子さんがいるのね。でもお客さんの前に立つなんて緊張しない? 大丈夫?」
「私はレジ係じゃなくて、野菜を切ったり包装したり、裏方の仕事なんです。だから、お客様の前に立つことはないから大丈夫です」
「そうなの」
お母さんは少しガッカリしたようだ。
「寂しくなったら、恵子さんの顔を見に行けると思ったのに……」
「あ、私は、午前中の仕事なので、お昼ご飯は一緒にいただけます」
「そう! 嬉しいわ。少し遅くなっても待ってるから、お昼ご飯一緒に食べましょうね」
「出来るだけ早く帰ってきますね!」
そんなわけで、み~んな働きに行く事になってしまった。お母さんは一人取り残されたような気持になった。ライがお母さんの膝に顔を乗せて上目遣いで見る。お母さんはライのフワフワの毛を撫でた。
「私には、ライちゃんがいるから寂しくないわ。ね! ライちゃん!」
ライは、嬉しそうにオッポを振った。
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