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「翔君は今、駅前の酒屋さんで働いています。今日は日曜日なので、大阪に出て行ったんですけど]
「そうですか……。あの、学校は?」
「ええ、あの子、まだ高校生でしょ。私も気になって行くように言ってるのですが、何ですか大学へ行く資格のようなものがあるそうで、今はそのために頑張っています」
「そうですか。迷惑ばかりおかけして、本当に申し訳ありません」
翔の父はまた頭を下げて謝った。
「翔ちゃんはしっかりした子ですね。大切に育てられてきたのにそんな甘えが少しも無くて、もう自分の道を見つけて歩き始めているように思います。本当に良い子で、私はいつも助けられています」
お母さんはゆったりとした口調で言うと、テーブルの上のミカンとお菓子を勧めた。その時、裏庭で自転車の止まる音がして、にぎやかな声がしてきた。
「腹減った。兄ちゃん、今日の晩飯何かなぁ。」
「お前な、さっき串カツとうな重を腹いっぱい食べたばかりなのに……」
大原のあきれた声が聞こてきた。
「陽奈ちゃ~ん。あれ、母さんもいない。どうしたのかな?」
いつも出迎えてくれるライもいない。キッチンに入りかけた翔が固まったように立ち止まった。
「翔、どうした?」
大原が不思議そうに翔の後ろからキッチンをのぞいた。翔の父親と目が合った大原は会釈した。翔は、父親と目を合わせようともしない。
「おかえりなさい。翔君、大原さん、大阪はどうだった?」
お母さんは、翔の様子に気づかないふりをして話を続けた。
「にぎやかでした。これ、兄ちゃんと俺からのプレゼント。ライの散歩のときにつけていってね」
「まあ! 嬉しいわ。プレゼントなんて!」
お母さんは幸せそうな顔をしてプレゼントのリボンをほどいた。
「まあ、暖かそう!」
お母さんはさっそくマフラーを首に巻いた。えんじと白の糸で織られている上品なマフラーだった。
「似合う?」
「うん。これにして良かったな。翔」
「あったかいわ。ありがとう。すごく肌あたりが良くて気持ちいいわ。ライちゃんのフワフワみたい!」
お母さんは嬉しそうにマフラーを頬っぺたに当てた。
……そこで会話が途切れてしまった。
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