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「それじゃ、明日、早速行きましょう。お仕事はお昼まででしょ?」
「ここから、少し遠いので大原さんの車をお借りしたいと思います」
翔の母が、言いかけるとお母さんがニコニコ笑って言った。
「あれは、スミレ荘の車よ。今は大原さんしか車の免許持ってないから。でも、そのうち陽奈ちゃんも翔ちゃんも車の免許取るでしょ? だから、大原さんに買ってきてもらったの。軽にしては大きくてゆったりしてるから気に入ってるの」
「ライも乗せていいんですか?」
「後ろの席は、ライちゃんのものよ。出かける時はいつも乗ってるわ」
「え?」
「だから、私も乗せてもらう時は、ライちゃんの横にチョコっと座らせてもらってるのよ」
「まあ、ライったら……」
「だって、ライちゃんはスミレ荘の守り神だもんね」
お母さんは、いつの間にか来ていたライの頭を撫でながら言った。家のカギを渡された翔の母は、嬉しそうで生き生きして見えた。
「……あの……家に行くこと翔に言った方がいいでしょうか?」
翔の母は顔を曇らせて聞いた。
「翔ちゃんは、まだ怒っているみたいだから、そっとしておいた方がいいんじゃないかしら。私の方から折を見て伝えるわ。今のままじゃ、お仏壇にお花も供えてないでしょ。翔ちゃんのおばあちゃんも心配なさってると思うわ。とにかく、恵子さんの元気な姿だけでも見せて安心させてあげましょう」
「はい。」
翔の母は決心がついたのか、明るく笑った。
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