第9章

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「それじゃ、明日、早速行きましょう。お仕事はお昼まででしょ?」 「ここから、少し遠いので大原さんの車をお借りしたいと思います」 翔の母が、言いかけるとお母さんがニコニコ笑って言った。 「あれは、スミレ荘の車よ。今は大原さんしか車の免許持ってないから。でも、そのうち陽奈ちゃんも翔ちゃんも車の免許取るでしょ? だから、大原さんに買ってきてもらったの。軽にしては大きくてゆったりしてるから気に入ってるの」 「ライも乗せていいんですか?」 「後ろの席は、ライちゃんのものよ。出かける時はいつも乗ってるわ」 「え?」 「だから、私も乗せてもらう時は、ライちゃんの横にチョコっと座らせてもらってるのよ」 「まあ、ライったら……」 「だって、ライちゃんはスミレ荘の守り神だもんね」 お母さんは、いつの間にか来ていたライの頭を撫でながら言った。家のカギを渡された翔の母は、嬉しそうで生き生きして見えた。 「……あの……家に行くこと翔に言った方がいいでしょうか?」 翔の母は顔を曇らせて聞いた。 「翔ちゃんは、まだ怒っているみたいだから、そっとしておいた方がいいんじゃないかしら。私の方から折を見て伝えるわ。今のままじゃ、お仏壇にお花も供えてないでしょ。翔ちゃんのおばあちゃんも心配なさってると思うわ。とにかく、恵子さんの元気な姿だけでも見せて安心させてあげましょう」 「はい。」 翔の母は決心がついたのか、明るく笑った。
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