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「お母ちゃん、ごめんね。すぐにキレイにするから待っててね」
「恵子さん、これからは、毎日お掃除に来るとご両親に約束しましょう」
おロウソクを灯しお線香を立てて二人はきれいになった仏壇の前で手を合わせた。
「じゃあ、恵子さんはお家の中を、私はお庭を掃除するわね」
お母さんはライと一緒に庭に出た。
「ライちゃん、一緒にきれいにしましょう」
庭に出ると、思ったよりも荒れていた。
「やりがいがありそうよ。ライちゃん」
表に回るとライの小屋があり、中に薄汚れたシーツが入っていた。その横に水入れの食器が、転がっていた。
(翔君、水だけは毎日入れ替えに来ていたと言っていたわね。この高い塀を越えていたのね)
お母さんは、翔の家を囲う高い塀を見上げた。形ばかりの塀のスミレ荘とは大違いだ。立派な門構えと威圧感のある塀……
お母さんは、腕まくりすると庭の手入れを始めた。草花の好きなお母さんにとってはやりがいのあることだった。しばらくすると、翔の母が来た。
「お母さん、お茶にしませんか? ……まあきれいになって!」
草引きが終わりキレイに掃かれた庭を見て、翔の母は驚いた様子で言った。
「まだ表玄関だけなのよ。横手も裏のお庭もこれからよ。」
「でも、見違えました。私はお部屋に風を通したのと、キッチンと洗濯物片付けただけです。」
「お部屋に風を通すだけでも大変よ。大きなお家ですもの。部屋数が多いでんしょ? それに他の片付けも済ませるなんて、やっぱり若いのね。これから毎日来てキレイにしていきましょう。お正月には間に合うと思うわ。私も来させてね。ライちゃんとお庭だけでもさせてちょうだい。」
「ありがとうございます。お母さん、私たち親子をこれからもよろしくお願いします」
翔の母が目に涙を滲ませて言った。そして涙をぬぐうとお母さんの手を握った。
「お母さん、こんなに手が冷たくなって。すぐに暖かいお茶を入れますね」
「私は、家のお掃除はてんで駄目だけど、お庭をいらうのは大好きなのよ。今日は楽しかったわ」
お供えしたおはぎをおやつにして、二人はお茶の時間を楽しんだ。
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