第10章

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「こいつら、許さん!!」 大原の怒りの声に雨谷は驚いて体を起こすと、蹴られた腰を庇いながら、慌てて逃げ出した。 「待て!」 大原はさっき取り上げた棒を、足めがけて投げつけた。雨谷は足をもつれさせて転んだ。 「何すんねん。この~ あほがぁ!」 雨谷は、ギロッと大原を睨みつけた。 「まだ懲りてないのか! この盗人女!」 「このあほ男! 死んでまえ!」 捨て台詞を残すと腰をかばいながら逃げ出した。大原は金髪の男の腕を思い切り締め上げると外へ向かう。 「痛い! 痛いやろ! 離せや! こらぁ! 殺すぞ!」 男はジタバタするが大原から逃げることができず、外に連れ出された。外に出ると、大原は停めてある軽四に、金髪の男を思い切りぶつけた。 「こらぁ! 車が凹むやろ!弁償してもらうぞ!」 車の助手席から出てきて雨谷が怒鳴った。運転ができないのか、逃げずに来るまで待ってたらしい。 「その前に、たまってる部屋代と、母さんから盗んだ金を全部返せ。そしたら話を聞いてやる」 大原は雨谷の腕をつかむと、へたり込んでいる金髪の男にぶつけた。ライは二人の周りを唸りながら、ゆっくりと歩いた。 「今なら、首を狙えるな。ライ」 大原の言葉に二人は縮み上がって、 「何言うねん!殺す気か! 警察呼ぶぞ!」 「もう呼んでる。すぐに来るからそこに座って待ってるといい」 「なにぃ⁉︎ えらいこっちゃ! 逃げんと!」 男が驚いて立ち上がると、女を置いて自動車に乗り込もうとした。乗りかけた男の足を、大原が自動車の扉で挟むと男は喚き散らした。 「痛い~。足の骨折れた~! 人殺し~」 「これぐらいで折れるか……あほらしい」 大原は呆れて、カギを取り上げた。隙を見て雨谷がこそこそと逃げ出そうとしていたが、足がもつれて自分でこけた。
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