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大原は雨谷と金髪の男を紐で縛り上げる。
「痛い~。なぁ、二度とここへは来ぇへんから見逃して~。部屋の荷物もあんたの好きにしたらええから~」
雨谷は急にしおらしい口調になって、涙をいっぱいためて上目遣いで大原を見た。
「じゃあ、そうさせてもらう」
「ほな!」
何を勘違いしたのか雨谷は得意げにニヤリとした。
「警察には引き渡すぞ」
「はぁ!? あんた、女にそんなことして心が痛まへんの?」
「おんな~? ただの盗人だろ。力の無い者を虐げるクズやろ……」
大原は嫌悪感を露わにして眉を寄せると嫌味たっぷりに言った。サイレンの音が聞こえてきた。
「お迎えがきたな」
「トイレに行きたい! トイレ! 漏れそうや! トイレ! トイレ!」
サイレンの音におびえた金髪の男は喚きだした。
「そんな事知るか。そこでしとけ。」
大原に相手にされないと……、
「怖い、助けて。警察だけは嫌や! 堪忍! もうここへ来ぇへん! 今回だけ見逃して~」
また大声で叫びだした。
「うるさい。黙れ! お前ら、一回、刑務所に入って心入れ替えて来い」
大原は、雨谷と金髪の男を睨みつけて怒鳴り返した。
「大原さん、ライちゃんがいないの。私をかばってこの人たちに棒でひどく叩かれたの……早く病院に連れて行かないと……」
お母さんがよろけながら外に出てきた。大原は慌てて支えに行えた。
「ライならここに……あれ? 今までいたのに」
どこにもいない。
「きっと、あいつ、翔を呼びに行ったんでしょう。こいつらを捕まえた事を知らせに」
「まあ! 大原さんもケガしてるわ! 早く手当てしないと……!」
お母さんは血の付いた大原の腕を見て驚いて叫んだ。
「これくらい、平気ですよ」
「大丈夫ですか!」
パトカーから降りてきた警察官が、大原に訪ねた。
「泥棒はそいつらです!」
お母さんは警察を見てホッとしたのか、胸を押さえて蹲るように倒れた。その様子を見た警察官は慌てて救急車を呼んだ。
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