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「……これ少ないけど、わしのほんの気持ちや、気ぃ良ぅ受け取って貰えたら嬉しいんやけど……」
社長は陽菜の手を取ると白い封筒を握らせた。
「ごめんやで。せめて、仕事の紹介だけでも、したかったんやけど、どこも苦しいてなあ……。ほんまに……ごめんやで」
陽奈は呆然とその場に立ち竦んでいた。
「堪忍してや」
社長は、のどの奥から絞り出すような声を出して、また謝った。
陽奈は小さく頷いた。胸が痛くて声が出なかったのだ。
(社長だって、工場が行き詰っていて大変なのに。もしかしたら、私よりも大変かもしれない……)
そう思う一方で、自分のこれからの事を考えると、頭の中が真っ白になって体が強張った。……部屋を出るとき、ちゃんと社長に挨拶したかどうかも覚えてない……
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