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録画された映像は鮮明だった。
―――「金はどこにあるんや。早よ。出せや」―――
と怒鳴りながら、金髪男がお母さんを蹴ったり、殴ったりしている様子がはっきりと映っていた。
恐怖のあまり背中を丸め、両手で顔を覆い、小さくなっているお母さんの姿を面白そうに見て、男を呷っている雨谷の姿も……。
ライは金髪男の前に立ちはだかり、殴られても蹴られても怯まず、お母さんを守るように、恐ろしいまでの唸り声を上げていた。
「ありません。もう何もありません。お金はあなた達に全部渡しました。どうぞ、堪忍して下さい」
「なに言うとんや。まだ、どっかに在るはずや。出せへんかったら、しばくど……」
男は苛立って、なおもお母さんを叩こうとする。
お母さんは、恐ろしさのあまり声を震わせ、助けを求めるように両手を擦り合わせ、金髪男を拝むように泣いて返事している声がはっきり聞きとれる。
「ほなら、権利書は? この家の権利書があるやろ。こんなボロ家でも、金に換えたらちょっとにはなるやろ。あんた、その婆さんしばいて、権利書出さしてや。うちは金目のもん探すわ。それより、そのうるさい犬、どないかしてや。集中でけへんわ」
「こ~らあ、くそ犬! 殺すど~!!」
吠えつくライに、男がバットを大きく振りあげた時、大原が雨谷を蹴り上げ、男を床に叩きつける姿が映っていた。ライは自分を盾にして、すぐにお母さんを庇っていた。
「大原さん、さすがに自衛隊出身だけあってカッコいいなあ。それにしても、ライちゃん惚れ惚れするなあ。二人に殴られても怯まず、勇気のあるなぁ。怖かったろうに……それにお母さんをしっかりと守ってほんとに名犬ですね」
警察官が感心して言うので、お母さんは自慢そうにほほ笑んだ。
「ライちゃんをうちにスカウトしたいくらいです。どうや。うちにけえへんか?」
「ダメですよ。この子はスミレ荘の守り神なんです。お母さんが転ばないように気遣ったり、話し相手になったり、散歩の付き添いをしたりと忙しいんですよ」
「そうですかぁ。残念だなあ」
警察官はライの頭を撫ぜながら、雨谷たちを尋問している他の警察官に目を向けた。
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