第2章

3/47
185人が本棚に入れています
本棚に追加
/223ページ
「あのう……、あの張り紙を見て、インターフォンを押したんです。その、……突然押しかけた上に、不躾で申し訳ないんですが、私をここに置いて下さいませんか?」 陽菜は深々と頭を下げた。 「もちろん、大歓迎ですよ」 陽菜は思わぬ言葉に、目を丸くした。 「……ほんと、ですか……? あの、でも私……」  ホッとしたものの戸惑っている陽奈に、老婦人は笑いかけて言った。 「うちは「スミレ荘」なんて表にアパートみたいに書いてるけど、間貸しみたいなものなの。だから、そんなに硬くならないで。まあ、お茶でも飲んで下さいな」 「はい。有難うございます」 陽菜は、勧められるままにお茶を一口、口に含んだ。冷えた体の中を温かいお茶が沁みとおっていくのがわかる。冷たい手が湯呑を通して温められ、感覚が戻ってきた。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!