190人が本棚に入れています
本棚に追加
幼いころに両親を亡くした陽菜には、“お母さん”と呼べる人がいなかった。
(おかあさん……なんて温かい言葉なんだろう。)
陽奈は、ふわりとした安らいだ気持ちになって、みんなを見つめていた。
「ねっ、お母さん。今から陽菜ちゃんの歓迎会をしましょうよ。私達、仕事の時間がバラバラで、今日みたいに揃うことないから」
京子さんがお母さんに提案すると、
「ほんとほんと、それがいいわ。私、部屋からお菓子取ってくるわね」
理沙が二階に上がっていった。久美子もすぐに追いかけて行った。
「まあまあ、賑やかなこと、じゃあ、私たちは、コーヒーでも沸かしましょうか」
「お母さん、私がするから、座ってて」
お母さんが腰をさすりながら立ち上がりかけると、京子さんがお母さんの肩をそっと触って止めた。陽菜が何か手伝おうとして立ち上がりかけたが、京子さんはウインクして、
「陽菜ちゃんも、座ってて、今日の主役はあなたなんだから」
(今日、初めて会ったのに、陽菜ちゃんって呼んでくれた)
陽菜は嬉しくて、お母さんを見ると優しく頷いてくれた。
「お菓子持ってきたわよ。始めよう。陽菜ちゃんの歓迎会」
理沙の言葉に、みんなテーブルに着いた。
最初のコメントを投稿しよう!