第2章

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幼いころに両親を亡くした陽菜には、“お母さん”と呼べる人がいなかった。 (おかあさん……なんて温かい言葉なんだろう。) 陽奈は、ふわりとした安らいだ気持ちになって、みんなを見つめていた。 「ねっ、お母さん。今から陽菜ちゃんの歓迎会をしましょうよ。私達、仕事の時間がバラバラで、今日みたいに揃うことないから」 京子さんがお母さんに提案すると、 「ほんとほんと、それがいいわ。私、部屋からお菓子取ってくるわね」 理沙が二階に上がっていった。久美子もすぐに追いかけて行った。 「まあまあ、賑やかなこと、じゃあ、私たちは、コーヒーでも沸かしましょうか」 「お母さん、私がするから、座ってて」 お母さんが腰をさすりながら立ち上がりかけると、京子さんがお母さんの肩をそっと触って止めた。陽菜が何か手伝おうとして立ち上がりかけたが、京子さんはウインクして、 「陽菜ちゃんも、座ってて、今日の主役はあなたなんだから」 (今日、初めて会ったのに、陽菜ちゃんって呼んでくれた) 陽菜は嬉しくて、お母さんを見ると優しく頷いてくれた。 「お菓子持ってきたわよ。始めよう。陽菜ちゃんの歓迎会」 理沙の言葉に、みんなテーブルに着いた。 
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