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第1章
「……え、解雇……ですか……? 今日……ですか……でも、……あの……」
「ホンマに申し訳ない、もうやって行かれへんのや……」
陽奈は呆然となった。
朝一番に内線で呼び出された時から嫌な予感がしていた。電話で呼び出されることなど、今まで一度もなかったから……
事務所のアルミ製の扉を開けると、社長が暗い顔で陽奈を待っていた。疲れた顔でパイプイスに座っている。陽奈の胸に不安で焦げ付くような痛みが走った。
「三上さん、ほんまにすまん。長い間、真面目に働いてくれて本当に有難うございます。わしが至らんばかりにこんな事になってしもうて、誠に申し訳ないと思っています」
いつも、「陽奈ちゃん」と親しげに呼ばれていたのに……
改まって苗字で呼ばれると、クビになるのは避けられないのだと痛感する。住み込みで働いていたので、今夜から寝るところにも困るのだ。
陽奈には帰る家も、慰めてくれる家族も無いからだ……
(社長も事情を知ってるはずなのに……急に辞めてくれだなんて……)
目の前が真っ暗になった。陽奈は、すがるような気持ちで、
「……あの、もう少し、ここに置いていただくことは出来ませんか?」
言葉とともに涙が溢れてきた。後から後からこぼれてきて止まらない。社長は泣き止まない陽奈を見かねたのか、いつもの砕けた口調で言った。
「陽奈ちゃん。ごめんやで。あんたには、最後の最後まで居てほしいと思てたんや。せやけど、こんなことになってしもて……」
社長も泣いていた。
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