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それでも切実にオレは、意味を、真実を、知りたいという衝動に駆られた。
「将来、科学がこの世界の構造をすべて解明したとしても、それは『どのようにして』っていう『How』に対する答えでしかない、けっして『Why』という問いには答えられない」
女が絡めていた指を解く。
「それでも人間は『なぜ』って意味を問うてしまう。『神は死んだ』としても、それでも不在の神を求めて」
フレームだけ残った空虚な空白を意味で穴埋めしたいと人間が欲してしまう限り、神のような超越的なものへの信仰も、存在意義を説明しようとする宗教も、永久になくなりはしないのだろう。
「ウロボロスは、本来不問の知識を負荷することで、意識っていう気づきを覚醒させた。自己の始まりと終わりの境界を揺るがし、自己言及のねじれた円環に閉じこめて」
自分とは何か、と考える自分、とは何かとその自分をまた考える自分、とはとさらに考える自分……という、ひたすらフレームラインのみなぞりつづける自己言及性の無限後退に。
「エラーなの」
ぷっと女が噴き出した。
「バグなのよ」
女が笑う。
「絶対零度に近似した条件下でマイクロ波を存分に浴びて生まれた、それが0と1の状態を重ね合わせもつ量子ビット、その超電導回路の情報処理能力によりプログラミングされ拡散されたのが、つまり量子コンピュータウイルス」
女が歪む。
「やっとトTo思い出した? 自分nnnnががががガガガGA何モノもの者物noかかかカカヵ化荷可過下科仮果歌加CATTTGCGTATGGGTACA……」
笑い声、ノイズ。
「奴隷」
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