エロスとタナトス

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 欲しい──いきりたちオレは、無性にこのリンゴを食べたい(、、、、、、、、、、)と思った。噛みつこうと口を開け、歯を()き出しにしたそのとき、 「ほら、欲している。このことこそが何よりの証拠(、、、、、、、、、、、、、)だわ」  ぐちゃ──と皮を(やぶ)る感触が、音が、した。 「私っていう主観がある(、、)のか、世界っていう客観がある(、、)のか、どっちがほんとうか先かなんてどうでも、どっちでもいい。現実(リアル)に証明されているのは、このリンゴを欲している(、、、、、、、、、、、)っていうこと」  ぐちゃ、ぐちゃ──やわらかい果肉の歯ごたえ。オレは肉にむしゃぶりついた。 「このリンゴがあるのかないのかってことは、ほんとうの問題じゃない。このリンゴが欲動を覚醒させる限りにおいて(、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、)世界が存在する(、、、、、、、)このリンゴが欲動を覚醒させるからこそ(、、、、、、、、、、、、、、、、、、)私が存在する(、、、、、、)」  ぐちゃ、ぐちゃ──つぎつぎ汁が溢れ出る。オレは夢中でかぶりついた。 「欲している──このことこそが『私と世界』を私と世界たらしめている証拠(、、、、、、、、、、、、、)」  ぐちゃ、ぐちゃ──真っ赤な肉片と肉汁が飛び散り、そこらじゅう真っ赤に、赤く、赤に、赤々と、赤、赤、赤……。  気がつけば、オレは女の真っ赤な×××を喰らっていた。 「やっと思い出した? 自分が何モノか」  ぐちゃ、ぐちゃ──ふと我に帰ったオレは、裸で刃物を手に、無我夢中で女の躰をさばいているところだった。 THE JUWE(、、、)S ARE THE MEN THAT WILL NOT BE BLAMED FOR NOTHING  何もない(ナッシング)何もない(ナッシング)……と繰り返し独語し繰り返し自問しながら、オレは誰か(、、)何か(、、)の言葉を書きなぐる。 「思い出した? ここは東の端(イースト・エンド)よ、切り裂き魔(ザ・リッパー)──」  女の笑い声が(こだま)する。  ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃぐちゃになった女の屍体が、血まみれのオレのほうを向いて笑っていた。 「名無し(ジャック)
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