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三話目 「プールの桜」
今から三十年は前、男がまだ十一歳の小六時代の話。
当時はまだ日本全国オカルトブームの最中で、「こっくりさん」や「口裂け女」、「人面犬」なんかの今や古典的な怪談や都市伝説が流行っていた。
その中の一つ、どこの学校にもあった「学校の七不思議」が男の学校にもあった。
「音楽室の肖像画」、「理科室の人体模型」みたいな定番のものばかりだったが、一つだけ他で聞いたことない話があった。
「プールの水面に映った桜を見ると不幸になる」という話だ。
これにはいくつかツッコミどころがある。
そもそも桜の咲く時期にプールは水抜きされているから水面がない。
さらにこの学校のプールは数年前、当時は珍しい屋内プールへ改修されていた。
だから近くに桜の木なんて映りようがなかった。
しかも、どうして映り込んだ桜を見ると“不幸になる”のかよくわからない。
まあこの理不尽さが怪談の醍醐味でもあるんだが。
男は小六の子供だったがすでに七不思議のおかしさに気付いていたため、特に怖がっていなかった。
それでも周りの熱狂具合にはある程度乗っておかないと仲間外れにされてしまう。
そんな不安から友達同士で肝試しに行くときも仕方なくついて行っていた。
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