三話目 「プールの桜」

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 深夜親が寝静まった頃に家をこっそり抜け出し、男と六人の友人たちは校門前に集合した。 七不思議なので七人でそれぞれ担当を決めて、噂の場所まで一人で向かい真相を確かめる。そんな計画だった。 じゃんけんで各々の持ち場を決めた。 男は「プールの桜」担当になった。 よりにもよって一番しょうもないやつ。 下がるモチベーションをなんとか保ちつつ、くだらない雑談をしながら校内を進み、校舎前で一度解散した。 一時間後に再び集合する予定だ。  持参した懐中電灯で闇夜を照らしながら歩く。 目的のプールがあるのは校門から最も遠い建物までなきゃならない。 さっさと済ませたかった男は早歩きでその場所へと向かった。 おかげで五分と経たずに着いた。 鍵を掛けていないという今では時代を感じる安全管理によってあっさり中に侵入できた。 時期は夏だ。 プールに水はいっぱいたまっているが、もちろん桜はない。 夜の、静かな室内はちょっとわくわくする。 窓から差し込む月明かりを水面が反射する。子供心にちょっと綺麗だと思った。 さて、問題なのはここからだ。 真相を確かめる、と言っても策なんかない。 とりあえずプールサイドを一周する。小学校には標準的な二十五メートルプール。 小学生の男にとっては広く感じる。 でも、男の姿しか映さない水面を見ても不幸になるはずがない。 数分もいれば飽きてくる。
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