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うちの学校は私立のマンモス校だから、学校内にコンビニがある。某七時から十一時までコンビニだが、もちろん学校内だからそんなに長くは営業していない。
いつものようにコンビニ弁当を買って教室に戻る途中で、後ろから誰かに呼び止められた。振り返ると、沖田とバッチリ目が合ってしまった。
「沢口さん、今日のホームルームで卒アル委員を決めることになってるけど、一緒にやらない?」
「なんで?」
そりゃあ、私だって楽しそうだなとは思っていたけど。クラスで男女一人ずつの卒アル委員を沖田と一緒にやることになるのは、何となくマズい気がする。
「なんでって……アルバムに載せる写真を選ぶ段階で、デコが目立つ写真をはじくことが出来るんじゃない? 協力するよ?」
”デコ”を強調した沖田を思わず睨みつける。
でも、確かにうちの兄が見たあの写真を卒アルに載せられたら、末代までの恥だ。
沖田と私が立候補すると、手を上げた他のクラスメイト達はなぜか立候補を取り下げた。
「沖田、頑張れよ!」
教室のあちこちから沖田にだけ激励の声が飛ぶ。
全然知らなかったけど、沖田は結構みんなに愛されているらしい。穏やかな人柄のせいか、縁の下の力持ち的性格のせいか。
沖田に保健室に連れて行ってもらった日から、私も沖田を観察するようになったので、彼の良さがだんだんわかってきていた。
「ありがとう、みんな! 俺、頑張るよ!」
照れ笑いを浮かべながらも、みんなにガッツポーズを見せる沖田。
卒業アルバムごときで、何をそんなに頑張ることがある?
それどころか、早速召集された卒アル委員会で、私たちは驚愕の事実を告げられた。なんと卒アル委員の仕事は自分の持っているクラス写真のデータを提供するだけだというのだ。
「何、それ。今までにない切り口の企画を提案するとか、せめて去年までとは違うレイアウトを検討するとか」
「そんな時間的余裕があると思うか? おまえたちだって受験勉強でそれどころじゃないだろう?」
私の抗議は学年主任にあっさり遮られてしまった。
確かにそうなんだけど!
悔しくて膝の上で握りしめた拳がプルプル震えた。
そんな私の気持ちを宥めるように、沖田が囁いた。
「何か考えよう」
じわっと胸が温かくなった。
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