【第3話】英雄裁判(後編)

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【第3話】英雄裁判(後編)

「……ちょうど、深夜の0時を過ぎた頃だったと思います。明日が激しい戦いになることは砦内でも予測されていましたから、前線に出る軽傷者の手当てを急いで。それから寝む前に、重傷者の状態を確認しておこうと廊下を歩いていたところ――突然」  身を震わせて絶句したカトレアに代わり、ユニアスがその後を引き継いだ。 「背後から一突き、だったとか。振り返る間もなく彼女は絶命したそうです。おかげで、犯人の顔は見ていない」 「他に手掛かりは?」 「何せ百年前のことで。深夜で、目撃者もいなかったものと思われます」 「彼女自身は、何か他に覚えていないのか」 「残念ながら。それに死者には生前の記憶しか残りません。あなたもそうでしょう? 死体になってから後のことは、当然何も。ただ、状況から考えて明らかに内部の人間による犯行だ。加えて刺し傷は致命傷の一か所。人殺しに慣れた人間……つまり徴兵された民間の兵士ではなく、職業軍人の可能性が高いと、俺はそう考えています」 「私のような、かね?」 「それ自分で言っちゃいます? でもまあ、その通りですけど」  悪びれもしないユニアスに対し、レオは呆れたように苦笑した。     
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