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「現場は現存しない上、図面もありませんのでね。現代の人間としては、大部分を想像で補うしかありません。後は依頼人の記憶による証言ですが、当日はそれまでに出た遺体を埋葬したばかりで、遺体の安置スペースはどこにも存在しなかったそうです。つまり、紛れ込ませる死体はまだなかった。だから、やはり内部のどこかに隠しておいたと考えるほかない。その場合、個室を持っていた人間なら隠すのは比較的容易かったのではないでしょうか」
「……私のように?」
「その通りです、やっぱり自分で言っちゃうんですね。実際、個室は依頼人も含めて三名にしか与えられていなかったそうですね。彼女は女性だったことと、重傷の人間を自室で診ていたために必要だった。それからもう一人は――」
「魔術師であり、軍師のミラーズ・サイモン。彼に、剣での人殺しは無理だよ。第一、必要ない」
きっぱりと断言するレオに感心しながらも、ユニアスは敢えて反論した。
「そうですか? 万一死体を見られても疑われないため、魔術は使わなかった可能性も無きにしも非ずですが」
「だとしても、片手が不自由だったミラーズに大剣を振り回すのはやはり無理だ。まして一太刀で――」
カトレアが息を呑んだ気配に、レオはハッとして口を噤んだ。すると目をきらりと光らせたユニアスがすかさず口を開いた。
「大剣、ですか。刺殺であることは伝えましたが、凶器についてまだ具体的にお話しした覚えはありません。一体何故、彼女を殺した凶器が大剣であることをご存じだったんですか?」
「……」
「カトレア・スノーを殺したのは、あなたですね?」
「――そうだ」
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