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――そうですか、お似合いだと思いますけどね。さて、そろそろ失礼します。突然押し掛けたにも拘らず、貴重なお話をありがとうございました。
どういたしまして。にしても、こんなの本当に記事になるの?
――国交の少ない街の人間なんて、基本退屈しているんですよ。だからこうしたお話は彼らの良い刺激になります。あとは少しでもお仕事の宣伝になれば、良いのですが……。
期待はしてないから、結果がどうあれ責任は感じなくても良いよ。こっちも客が来なくて退屈してたからありがたかった。新聞できたら、送ってもらえる?
――それはもちろん。ただ、写真を撮らせて頂けなかったことが残念です。画があった方が、記事は断然映えるんですけど。
職業柄、あんまり目立ちたくないんでね。それじゃ、気を付けて。
――それでは失礼します。お茶、ご馳走さまでした。助手さんのためにも、どうか頑張って続けてくださいね。
***
木製の扉がパタリと閉まり、ユニアスが内鍵を掛けていると背後に栗色の髪をゆるく一つに編んで長く垂らしている、十八歳ほどに見える少女が音もなく近づいた。
「びっくりした……おまえ、そうやって気配消すのやめろ」
「お客は帰った?」
「ああ、帰った。アーデルハイト、お茶のお代わりくれるか」
「うん」
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