【第2話】英雄裁判(前編)

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【第2話】英雄裁判(前編)

 パチン、と指を鳴らす音で目覚めると、そこはひどく薄暗い空間だった。 「お目覚めですか?」  目の前には大き目のシャツをゆるく着た若い男が立っていて、こちらを見下ろすように顔を覗き込んでくる。周囲に溶け込むような黒い髪と、鮮やかな赤い目がひどく印象的だった。自分が粗末な木の椅子に座らされていることを認めながら、ゆっくりと周囲を見回した。すると男の背後にはやはり若い女が二人いたが、どちらかと言えば控えめな方の女性の顔に視線を移した時、思わず驚きの声を上げていた。 「君は……カトレア!? まさか、だって君は……」 「死んだはず、ですか?」  若い男が言葉を引き継いで、それから少しばかりシニカルに笑った。 「確かにその通りなんですけどね。でもあなたがそれを言うのはおかしな話だ。だって、あなただってとっくの昔に死んでいるんですから――レオ・レクリファスさん。ここは今も『英雄』と呼ばれているあなたの霊廟の中だ」     
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