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今から百年ほど前。隣国からの侵略を受けた際、常に最前線で戦った最も高名な将軍である彼を人々は「英雄」と称えた。カーナ砦の攻防で遂には命を落としてしまったが、その功績から人々は後に故郷であるこの街に霊廟を建て、彼に感謝しその冥福を心から祈ったと言う。
「その英雄譚は今も親から子にと代々語り継がれ、平和を取り戻した現在、ここは訪れる外国人にとっても有名な観光スポットとなっています。ご自分の亡くなった状況と今の時代について、ご理解いただけました?」
「……戦争が終わったことと、今が百年後の世界だということは何となく。それでは、今ここにいる私は死人ということか?」
「さすが、飲み込みが早い。あなたも彼女も、ネクロマンシーの秘術で俺が仮蘇生しました」
「なるほど、ネクロマンサーか……差し支えなければ名を訊いても?」
良く見れば十代にも見える若い男は、意外そうに目を瞬きながらもすぐに答えた。
「ユニアス・ジャックフォード。因みにそっちは助手のアーデルハイトです」
助手だと紹介された少女を軽く一瞥して、レオはすぐにユニアスの方に視線を戻した。
「ジャックフォード……私でも知っている。名門中の名門だな」
「恐れ入ります」
肩をすくめるその背後の見慣れた姿に、レオは再び目を奪われた。
「……カトレア」
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