一章 僕らの思い one

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「もっしもーし!」 陽気というか愉快というか元気というかそんなようなハイテンションに高めの声を聞かせるのは燈だ。続く声は 「もっしもし亀よ亀さんよぉー」 とこれまた燈に負けじ劣らずのハイテンションかつ陽気な声だ。これは、はるさん。続いて男子勢は 「やっほー」 「ういーっす」 とそれぞれ女子よりテンション低めのようにも伺える。奏ちゃんは 「こんにちは~」 とこれまた律儀というか丁寧というか優しい柔らかな声で入ってくる。それを受けて僕を含めみんな、こんにちはと返し、ユズくんがそれに続いて言う。 「今日は何やる?」 特に計画もなく電話を始めたものだから何をするのかそこから決めて行かねばならない。しかし燈はすぐに思いついたようで、あ!と声を上げる。 「外郎売やろう!」 外郎売とは「拙者親方と申すは、お立会の中うちに御存じのお方もござりましょうが、お江戸を発たって二十里上方、相州小田原一色町をお過ぎなされて、青物町を登りへおいでなさるれば、欄干橋虎屋藤衛門、只今は剃髪致して、円斎と名のりまする。」の一文から始まるかなり有名な早口言葉だ。外郎売の口上は、俳優・タレント、アナウンサーの養成所などで発声練習の教材としてよく使われている。それをうけて僕らも練習したり言い合ったりしている。 「まじか、まだ全然言えないや?」
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