一章 僕らの思い two

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「なぁ。」 と万騎は三回目の俺に対する呼びかけを口から零す。万騎は今、俺、春川秋の部屋にいる。 「なぁって」 ゲームするから後でお前んち行く。と言われ学校からの帰宅早々Switchを取り出したのに万騎はゲームをやる様子を一向に見せない。珍しく塾の休みだからゲームしようと昨日から誘ってきたのはそっちじゃないか、と面白くない気分で先程から呼びかけを無視している。なんか話したいことでもあるのかひたすらになぁ、だとか、聞いてるか秋、だとかを繰り返している。いい加減イライラして、 「何だよ」 と不機嫌に反応すると万騎は告げた。 「今、LINEグループに入ってんだよね。」 そう言われて少しドキッとした。先程の不機嫌が一瞬で何処かにいってしまったような焦燥感が俺を襲う。なんの、誰と、何のために。と矢継ぎ早に質問が出そうになりそれを抑えるために言った一言は 「へぇ…そうなんだ」 という言葉だけだった。我ながら間抜けな返事をしたと思う。それは何故か。単刀直入に言おう。俺は万騎が好きだ。窓を通してお互いの部屋を行き来出来るような隣家に住む幼馴染である神宮寺万騎に惚れている。物心ついた頃にはすでにずっと一緒にいた。お互いがお互いに知らないことなんて何もないような関係で。だからこそ、今「LINEグループに入っている」と言われ自分が知らない万騎を見た気がしてなんだか不安に思ってしまった。だからと言ってその気持ちを言ってしまうともう幼馴染の関係ではいられなくなってしまう。その関係を壊さない様に、その思いを悟られない様に今までやってきた。その動揺を悟られない様に先程の言葉に間髪を入れずに繋ぐ。 「そうなんだ、なんのグループ?」 そう聞くと万騎はちょっと驚いた風でもありながら嬉しそうに答える。 「声優志望の、グループだよ。」
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