一章 僕らの思い two

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性格や家庭環境も相余り、自己嫌悪ばかりしていた万騎にとって声優とは一つの希望だ。もともと片親だったわけではないが事故死した父親に残されてしまった母親からの期待や安定を求める重圧を感じながら万騎は生きてきた。それを俺は幼馴染として見てきて同情もしたし庇護欲も芽生えた。そしてそれは気がつけば俺が守らなければという使命感から俺が守りたいという愛にも似通った恋に変化していった。一つのきっかけというきっかけは存在するがそれは後述しよう。だからこそ万騎の道は邪魔したくないが俺が守る万騎でいてほしいと思ってしまった。思ってしまっていた。 「そうか、万騎、頑張れよ」 そう思っても。愛しいと思っても、離れてほしくないと思っても、世界はそれを認めない。世間は俺と万騎だけで成り立ってはいないし、二人で生き抜いていくには難しい。それに世の中は同性愛に友好的ではない。むしろ批判的に出来ている。男と男は友情以上の関係になることはおかしい、と。 「おー。頑張んないとな。」 万騎が好きだからこそ、万騎にはそういった世間の目に晒されて欲しくない。そう思って今日も俺は万騎に接していく。 「そうだな、頑張れよ。俺はずっと応援してるかんな。」 それに万騎にとって家や学校が安寧の場になりえない今、俺の隣という安寧の場を奪うことは万騎にとって瀕死を意味する。だからこそ、俺はずっとひた隠しにすると決めている。そんな俺の決意を全く持って知らない万騎はこう続けた。 「それで先輩がすげえんだよ。」 新しい友だちが出来た小学生のように、目を輝かせて話を聞いてと言わんばかりに肩を叩く。俺は、それを受け入れるようにうなずきながら万騎を見つめ直す。そして尋ねる。 「先輩?年上なのか?」
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