一章 僕らの思い two

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「部活とか、バイトとか、…恋愛、とか?」 経験と聞いてすぐに部活に繋がる万騎の短絡思考を助けるようにバイトと恋愛を追加して返事する。万騎と俺には今まで彼女がいた試しが一度もない。俺が万騎を好きなのは前述したとおりだがそれを自覚したきっかけは中学二年生だった。俺は別段モテる方ではないのだがたった一度だけ一年前、中学二年生の確かあれは夏休み前、告白されたことがある。無論、部活が忙しいだとか言って交際の申込みは丁重にお断りしたのだが万騎に告白されたと伝えたとき、万騎から言われた言葉を鮮明に覚えている。 「秋はさ、彼女が出来たら俺とはあんまり…遊ばねぇ?」 と言ったのだ。その時咄嗟に 「そんなことあるわけ無いだろ。それに今は彼女とかいらないし。」 と苦笑して一喝した。そうして笑って万騎に尋ねようとした。 「万騎はどうなんだよ、彼女、欲しくねえの?」 と。しかし俺にそれを尋ねることはできなかった。なぜなら、万騎にもし彼女が出来たら、一番優先されるのは彼女なのだろうか、それは嫌だと思ってしまったからである。どうして嫌と思ったのか直ぐに考えが恋愛に直結したわけではない。その時はただ漠然と万騎を取られたくないという思いが渦巻いていた。それが今ではこんなに苦しい思いになってしまうのだから、きっかけになった中学二年の時告白してきた女子、宮原綺湖には今でも感謝すればいいのかそれとも怨嗟の念を抱けばいいのかわからない。 「恋愛かー」 間延びした声を出し考える万騎は好きな人すらいないと公言している。俺には「好き」という感情がわからないと言ってきたことがある。万騎が俺に嘘をつくとも思えないし多分本当に「好きという感情が分からない」のだろう。俺は万騎にそれがどんなに苦しくて切ないものなのか気がついて欲しいと思う反面に万騎が将来好きになる相手はどんな相手なのかと、もやもやしている。
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