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序章 万騎の場所
山越一騎、ネット名「樹」と神宮寺万騎、ネット名「万騎」が出会ったのはネットという人の感覚を狂わせる不思議な場所だった。
その時の一騎はただただ音楽を愛し、夢に向かって進んでいこうとしているところでその時の万騎は夢を目指す方法がなくてただただ藻掻いていた。
二人の共通点はアプリのデザインがピンクベースの音楽アプリ、nanaを使っていることに帰属する。また、声優志望であるということも大いに関係してくる。そんな二人だが彼らは一人の友人と呼べるべき存在を介して出会った。その彼女の本名は上村明璃。ネット名、燈。
初めから話そう。燈もまた万騎と一騎と同じく声優を志すもの。燈はnanaに留まらず、アプリデザインが緑の某トークアプリLINEで声優志望の人と関わることを企画した。それに参加したことによって二人は会った。二人にとどまらず、何人か声優志望が集まり奏こと吉野響を始め燈と仲のいいネット名、ユズの本名、宮島柚樹。そしてそのみんなから尊敬される優亜こと坂田優莉亜。燈とユズの二人は昔からの馴染みでは仲が良く、フレンドリーな気質の優亜はそれに怖じけず馴染み、響もなんら戸惑うことなく怖じけず寧ろそれを謳歌した。しかし後から入ってきた万騎はあまり馴染めずにいたのは嘘とは言い切れず一騎はといえば自分を変えようとネットを始めたもののネットという環境に恐怖を感じてしまったのも相まってあまり馴染めていなかった。家庭環境もあり、一騎のなかでネットは怖いという思いが心で渦巻いていた。
そんなあまり馴染めていなかった二人、万騎と一騎はもともとはじめはお互い、際立って話すことをしなかったが二人共、学生であり生活スタイルが類似していて後々話す機会が増えていく。
一騎も万騎も歌が際立って上手だったわけではない。それぞれが際立った声ではなかったわけだがそれでも一騎は万騎の声に惹かれた。別段、水のように透き通っている声なわけでも圧倒的歌唱力を持ち合わせているわけでも、はたまたノイズが魅力的に聞こえたわけでもない。一騎はただ万騎の声を聞いて「儚げで今捕まえておかないと消えてしまう」と思ったのである。ただそれだけであった。
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