序章 万騎の場所

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実際一騎の思ったことは強ち過ちであるとは言い切れない。「儚げ」はそこから来る万騎の無意識的な感情であろうし「消えてしまう」というのも間違いではない。後述する幼馴染によって繋ぎ止められたことが片手では足りないほど存在する。万騎の生まれた環境否、育った環境は酷以外の何物でもなかった。無論、もっとひどい環境に生まれ育った人もいるだろう。それでも万騎の環境は誰がどう見ても「可哀想に」と眉を下げてしまうと思う。しかし万騎はそれを哀れんで欲しいのとは違う。万騎はいつも思う。「可哀想に」と顔を歪めるともっともっと惨めになってしまう。それに俺にはまだ救いがある方だ、と。前述の通り万騎には幼馴染、春川秋がいた。それに秋の姉、かりんがいた。悲しいとき、秋やかりんに頼れば慰めてくれた。辛い時、秋と一緒に布団に入った。喧嘩こそすれど秋はいつだって万騎の味方でいてくれる。中学になって辛抱強くなったほうだがしかし今でも万騎は辛くなってどうにも我慢できないとき隣家に赴く。 「秋、苦しいよ、助けて。」 と。そんなときは大方ゲームをした。テレビゲームでも、小型通信ゲームでも。それをすることで苦しみが忘れられたとは言わない。しかし、確かに自分はここにいてもいいのだと肯定されている気がして万騎はホッとすることができた。  そんな安心の場所がまさか、心を焦がすような場所になってしまうとは全く予想していなかった。 これは万騎、秋、一騎、かりん、四人が愛を探し求める、哀しく愛しい、そして美しい恋物語。 ──僕はここにいてもいいですか。 ──俺に愛を教えて下さい。 ──私はどうすべきなのか。 ──俺はあいつに何も出来ない。
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