役員提案、そして

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「だって、高岡さん、二年先輩だよね?」 「君は大学院行ったんだろ? 僕は学卒だから二年早く入社したのは当たり前」 「背丈も顔も全然違うし!」 「中学一年生だったからね。背も伸びて、今は兄貴より上背あるよ」 私は愕然としていた・・ 卒業式で一緒に泣いてくれた、義信君が、この高岡さんなの・・? 「ヘレンインゼル島で君を見掛けた時は心が踊ったよ。こんな所で君に逢えるなんて・・ でも君は多分、僕の事、覚えてないんだろうなと思って声を掛ける事が出来なかった。だから、あの泥棒にはちょっとだけ感謝している」 「欧州から帰国して、君がこの会社に採用されたのを知ったんだ。僕はカーラにお願いして、君を商品企画本部に配属する様に手を回して貰ったんだ。これはとてもズルかったかもしれない。でも、君は僕のプレゼンの成功に素晴らしい貢献をしてくれた。だから、ますます惚れ直したって訳さ・・」 彼は本当に嬉しそうに話している。 「惚れ直したって・・ それは・・ 私の事・・?」 私が恐る恐るそう聞くと、彼は私を柔らかな目で見つめた。 「好きだった・・あの卒業式の時も・・」 「えっ? それじゃ、貴方が片想いして忘れられない彼女って・・」 「君だよ梨花さん・・ 中学のあの時から、君は僕の憧れの存在さ。だから、今でも片想いしている・・。でも、もし僕が兄貴に似ているから告白して来たんだったら、僕は兄貴の代わりじゃないから・・君の想いは受け止められない」 えっ? と思って、私は大きく首を振った。 「違います。先輩じゃありません。義信君が好きです。プレーンの駅前で私を助けてくれて、ドキドキする様な素晴らしいプレゼンをする・・ そして私と一緒に泣いてくれた・・義信君が好きなんです・・」 心臓が爆発しそう・・私は多分、耳まで真っ赤になっている。 「・・ありがとう、とても嬉しい・・僕も梨花さんの事、大好きだ。この気持ちは中学生の頃から全く変わっていない」 私が右手をテーブルの上に伸ばすと彼の右手がその手に触れた。 二人の手はレストランの照明の下でピンク色に染まっていた。その色はあの日の桜の様だった・・ FIN
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